今回の旅行で最も重要なイベントは、黒部峡谷トロッコ電車です。当初は立山を縦走する計画もありましたが、天候が許さず断念しました。とはいえ、黒部峡谷トロッコ電車も立山エリアのアクティビティの一つと言えます。
黒部峡谷は、北アルプスのほぼ中央に位置する鷲羽岳を源流とし、全長約86km、標高差3,000mを誇る黒部川の上流から中流にかけて形成された深いV字谷です。日本でも数少ないV字谷であり、日本三大渓谷・日本の秘境百選にも選ばれています。
かつて黒部峡谷は、誰も訪れることのない未開発の秘境でした。しかし、豊富な降雨量と急峻な河川地形が水力発電の開発に適していると評価され、1923年に建設資材運搬用の鉄道として、観光用トロッコ電車の敷設工事が始まりました。その後、電力開発工事は極めて困難を極めましたが、黒部川を遡る形で柳河原、黒部川第二、黒部川第三、黒部川第四など多数の発電所が建設されました。中でも黒部川第四発電所は「黒四」の愛称で親しまれ、その世紀の大事業に至るまでの苦難の歴史は今なお語り継がれています。当初は資材運搬用だったトロッコ電車も、後に地元住民の生活の足となり、次第に観光客向けの乗り物へと変化していきました。
関西電力は鉄道路線を活用した観光事業を展開するため、1971年に完全子会社である黒部峡谷鉄道を設立し、全長20.1kmの黒部峡谷鉄道本線の運営を開始しました。この路線は、日本では珍しい762mm(ナローゲージ)軌間を採用した鉄道路線です。
トロッコ電車は積雪期には運休するため、運行期間は例年4月中下旬から11月末までとなっています。そのため、運行期間中で最も体験する価値があるのは秋の紅葉シーズンでしょう。
トロッコ電車は単なる観光用だけでなく、途中駅での乗降も可能です。全区間には宇奈月、黒薙、猫又、鐘釣、欅平の5つの駅がありますが、2024年の能登半島地震の影響により、現在は宇奈月から猫又までの区間のみの折り返し運転となっています。
トロッコ電車へのアクセスは少し手間がかかります。富山駅から富山地方鉄道本線に直接乗車するか(所要時間約1時間45分)、あるいは新幹線で黒部宇奈月温泉駅まで行き(約12分)、そこから富山地方鉄道本線に乗り換えて(約30分、合計所要時間約1時間)宇奈月温泉駅に向かう方法があります。宇奈月温泉駅に到着後、徒歩数分でトロッコ電車の駅にたどり着けます。
チケットは事前に公式サイトで購入しておくことをお勧めします。乗車前に窓口で引き換える必要があります。トロッコ電車の本数は少ないため、時刻表をよく確認してください。また、トロッコ電車だけでなく、往復の富山地方鉄道本線の時刻も必ず確認しましょう。同路線は本数が非常に少なく、現金のみでの支払いとなるため注意が必要です。
宇奈月温泉駅を出るとすぐに温泉噴水が見えます。これは1973年に宇奈月温泉開湯50周年を記念して建てられたもので、黒部峡谷の黒薙温泉から約60度の湯を引き込んでいます。2023年には宇奈月温泉が開湯100周年を迎えましたが、このような温泉噴水を見られるのはとても貴重なことです。
黒部峡谷トロッコ電車の駅は、富山地方鉄道の駅から約300m離れています。
トロッコ電車には2種類の車両があります。一つは窓のないオープンタイプで、1列に4人掛けとなっており、写真撮影に最適です。写真を撮りたい場合は、行きは進行方向右側、帰りは左側の座席を選ぶのがおすすめです。もう一つは窓付きの密閉型で、追加料金500円が必要です。座り心地は快適ですが、ガラスが古く傷や曇りが目立ちます。窓を開けられるとはいうものの、上から下にスライドさせるタイプのため、開けっ放しにすると後ろの乗客への配慮が必要になります。本格的に写真を撮影したいのであれば、やはり窓なしの車両をお勧めします。
駅のそばにはトロッコ電車の模型があり、望遠レンズがあればきれいに撮影できます。
欧米からの観光客が非常に多いです。
乗車します!
新山彦橋は、宇奈月駅を出発したトロッコ電車が最初に渡る深紅の鉄橋です。列車の音が山間に響き渡り、温泉街にこだま(山彦)のように聞こえることから、この名前が付けられました。下に見えるのは旧山彦橋で、現在は歩行者専用橋として利用できます。
新柳河原発電所は、ヨーロッパの古城のような風格があります。
道中の景色はどれも美しく、色とりどりの山々がまるで油絵のようです。
現在の終点である猫又駅に到着しました。全国の鉄道駅名の中で、漢字の「猫」が含まれる唯一の駅です。猫又駅では20分間停車しますので、下車して散策することもできます。
ちょっと変わった展望台も作られています。
展望台からの眺め
休憩時間には車両の撮影も楽しめます。
復路で戻った後は、時間に余裕があれば食事や写真撮影を楽しめます。
駅にはレストランがあり、2階には休憩室も備わっていて、設備は非常に充実しています。
また、富山地方鉄道本線の駅舎1階には、人気のスイーツ店「Alpen Cheesecake」があり、チーズケーキは絶品で価格もお手頃です。
さらに駅の隣には黒部川電気記念館があり、黒部川の電力開発の歴史、黒部峡谷の自然景観、水力発電について紹介されています。館内には水車の模型が展示されているほか、戦前の貴重な映像や図表を通じて、世紀の大事業「黒四」の歴史を伝えています。入館は無料ですので、お時間があればぜひ立ち寄ってみてください。その他、SELENE美術館もあり、日本現代美術界を代表する画家たちによる「黒部峡谷日本画展」が常設展示されています。






















